大学の片隅で事務職員がさけぶ

小さな大学の事務職員がいろんなことをさけびます

学校法人のガバナンスはどうなっているの

この夏、あちこちで大学職員の集まりがあったみたい。みなさん勉強好きなんですね。うちの職場でも参加している人がいるみたいだが、役に立っているのかなぁ。

 

そんな私は家族サービスと読書で夏休みは使い切りました。

おかげでシルバーウィークはお金がなかったのでどこにもいけなかった。

 

そんな夏にこんなニュース。

私的流用1480万円、文理佐藤学園令嬢の異常な金銭感覚…海外出張2年半で285日間 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

 

文理佐藤学園」の創業者の長女で学園長と小学校の校長を兼務していた人が、学校のお金でアメリカを豪遊していた、といったニュース。

創立者一族による経営が行われている学校法人って、けっこう多いのでしょうか。

学校法人って、仕組みの上では「オーナー」は存在しない。学校法人は創立者からの財産提供によって設立されるわけなので、提供したら権利はなくなる。株式会社でもないから、出資比率での支配ということもできない。学校法人の寄付行為には、理事のうち1名は創立者の一族を入れる、みたいな表現が入っているところもあるみたいだが、理事会の過半数を押さえない限り法人を支配することはできない。ということで、親族や近い人たちで理事会を固めて支配することで、実質的に支配することが可能。

理事だけではなく、事務職員の役職者などを身内で固めることで支配は強力になる。制度ではなく人を使うことによって支配することができる学校法人はある意味、とても支配しやすい組織体なのかもしれない。

 

文理佐藤学園は学外理事もいるみたいで閉鎖的とはいえないようだ。

もちろん学外理事だからといって、会計の帳簿を細かく見るわけでも、伝票の決裁をするわけでもないから、今回の問題には無力だ。

 

会計処理をしていた事務職員や決裁していた役職者は、知っていたわけですよね。もちろん「おかしい」とは立場的にはいえないかもしれないけれど、今になって法人も被害者、みたいな感じになっているのはどうかと思う。

 

この事件のあと、何人かの業界関係者と話をしましたが、この程度の話はあちこちにある。ただ、表ざたにならないだけだといわれましたが、どうなのだろう。

うちの大学はオーナー系ではないけれど、えらい人たちがどんなお金の使い方をしているかはわからない。でも「うちには交際費とかないから」といわれていて、外部の人を招いての夜の宴会はだいたい、学長や理事長が自腹で払っている、みたい。

 

文部科学省がいう大学のガバナンスの強化は教学、大学部門における学長を中心とした体制のことを主にいっているが、そのうえにある理事会や法人部門のガバナンス強化という話にはなぜならないのだろう。コーポレートガバナンスの観点からすると、学外理事を過半数にするとか、もう少し細かい財務諸表の開示とか、評議会の強化などが考えられる。これから大学運営は厳しくなる……いや厳しいところはもう厳しいわけですが、だからこそ法人運営を強化して適正な収支の維持や大学存続を前提とした長期計画の立案が必要なのだと思う。

 

大学はともかく法人運営がちょっと……というところは、はたしてどれだけあるのか。今回の事件は氷山の一角なのか。

他の学校法人でも同じようなことが、と、次々と報道されるかと思ったら続報は今のところないようですね。

うちは大丈夫なのか、今度会計の職員と呑んだときに聴いてみないと。

内部規則等の総点検・見直しは終わらない

学校教育法改正に伴ういろいろな対応も何とか終わってほっとしていたら、やってきたのが文部科学省からの調査である。

予告されていたものであったが、面倒な調査だったら、いやだなぁ、と思っていたけれど、実際に見てみたらあまり問題なさそうなものだった。少なくとも、きちんと対応していたら、胸を張って答えられる内容であった。

ああ、よかった、と思って監事用のものを見たら……大変そう。

 

あ、内容は公開されていないみたいだから、あまり書いてはいけないのかな。

 

一方で、とある団体がおもしろい解釈をしている。

http://www.jfpu.org/no%20governance%20reform/20141020NS_kaiseigakkyoho_torikumi.pdf

学校教育法改正に反対していた団体のはずだが、今回の文書ではむしろ改正された学校教育法を守れ、といった主張になっている。

そして、一部首肯しかねる部分もあるが、政府の答弁なども踏まえながら、基本的にはまっとうな解釈をしているのである。法律の解釈の仕方についての参考になるのではないだろうか。

 

簡単に言うと、私立大学においては運用次第なんですよね。

うちの大学でも教授会の審議事項などで多少はざわつきましたが、明文化して規定しないといけないものもあるけれど、運用自体はこれまでどおりなので、と何度も説明して納得してもらいました。教授会活動が活発ではないうちのような小さな大学ですら「どうなるの?」となったくらいですから、教授会が強い大学はほんとうに大変だと思う。

 

とりあえずは、動かしながら様子を見ていくしかない。今のところは何も問題はないようだし、どこからも不満は出ていないので、きっと本当に昨年度までと変わらない状態で動いているのだろう。

 

でも、それでほんとにいいのかな。

 

 

 

説明会に参加したけれど

先週、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」と「大学教育再生加速プログラム」の説明会に参加してきた。

「無理ですよね」という感じだったけれど、とりあえず誰かが行ってくれば、という感じになり、そうなるとうちでは私が行くのが当たり前、という感じになり、直帰申請で最後の回に参加。

見渡すと年齢層が高い。私のような若輩者は会場のはしっこでおとなしく聞いてました。みなさん全国各地から来たのでしょうね。明らかに地方対象ですから、しかたないのか。

 

「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COCプラス)」
以前のものは地域再生・活性化の核となる大学の形成だったけれど、今回は若年層人口の東京一極集中の解消が目的となっている。それにともない、大学の自治体との協働という枠組みから、大学と自治体、複数の他大学、企業、NPO、民間団体とともに「事業協同地域」を形成し、その核として、複数事業所をつなぎあわせ、事業を推進させる「COC推進コーディネーター」を配置するようなことをしないといけないみたい。
 都市圏の大学は、地方の大学や自治体、企業と連携しないといけないようで、そんな伝手もないうちは無理ですね。
 
「大学教育再生加速プログラム」
今年度は「アクティブラーニング」「学修成果の可視化」「入試改革・高大接続」のテーマに即した公募であったが、来年度は「学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学習プログラムの推進」のみ募集となる。入学直後に1か月以上の長期の「学外学修プログラム」(長期インターンシップ、ボランティア、フィールドワーク等)を開発・実施する大学のサポート体制整備を支援する。
……ムリですね。 
あ、これを読むようにといわれて見たけれど、ますます無理だと思いましたよ。
 
東京圏の大学には無理なものだということがわかっただけの説明会だった。
たしかに東京圏には大きな大学や学生募集に苦労していない大学がたくさんあるけれど、一方で小規模な大学もたくさんあるんですよね。困っている大学も多いんですよ、ほんとは。
今回の説明を聞いていると、うちのような東京圏の小さな大学は学生が集まる市場はあるのに努力が足りないから苦労しているのであって、だめならつぶれなさい、と言われているように感じた。
……実はそうかなぁ、とも思うけれど、とりあえず定員を満たしているうちの大学はまだ危機感が満ちてはいない。でも、今回の入試の志願状況を観ていると明らかに悪化しているし、定員割れという現実に直面するかもしれない、可能性が高い。
そうなったとき、うちはどうするのだろうか。
改革のための提案書はいくつか書いたけれど、上司の手の中で眠っているみたいだし、こういった競争的資金を導入できないのであれば、独自に何かしないといけないはずなのだけれど、とりあえず定員は割れていないし、財務状況もキャッシュが豊富であるという状況の中で、現実を見ようとしない人が多いのかな。少なくとも役職者や理事の人たちが定年退職するまでは大丈夫そうだし。
だからこそ若手がもっと考え、動かないといけないのだけれど、職場を見渡すと彼らもあまり危機感は感じてないようだ。
 
大学職員への道をついつい見てしまう、私であった。

内部規則等の総点検・見直し状況

文部科学省から内部規則等の総点検・見直し状況に関する進捗状況調査票が届いた。

ほんとうは違う部署に届いたんだけれど、廻り回って、気が付くと私の目の前に。

 

なんで私のところに、という問いに上司は

「君が全学の担当者だから」

えー、そんなの聞いてない。私は単純に案を考えるだけですよね、といったら、そうではなく、実施も含まれているというのだ。

知らない間に各部署との話し合いが行われて、そう決められてしまったらしい。

そんな面倒な仕事、マネージャーの仕事ですよね。でも、まかされたら仕方ない。調査票を眺めてみる。

 

質問は5つだけ(秘密じゃないから、書いてもいいよね?)

1.法律及び省令改正の内容や趣旨について、学内で十分に周知・理解されていますか。

→周知もされてないし、理解もされてない。教授会が実質的にないので、教員はみなさん無関心。関係の事務部署はこの話題を避けている。どうやって周知しよう。

2.総点検・見直しを行う学内の体制(実施責任者、担当部局、担当者の確定等)は整備されていますか。

→担当部局はうちの部署で担当者は私らしい。実施責任者は、誰になるのかな。

3.総点検・見直しを行うにあたって、設置者や学長から、作業に携わる者に対して、具体的な方向性や方針は示されていますか。

→具体的な方向性と方針の案を作ったので、あとは来週学長と理事長に了解をもらう。これで示された形になる、のかな。でも、2人も「よろしく」と上司に言っているみたいだからすでに示されているととらえてよいか。

4.内部規則の総点検作業の実施状況について、右記より最も近いものを選んで下さい。

ア.完了
イ.作業中
ウ.未着手

→作業中、になるのかな。

5.総点検作業の結果、見直しが必要な内部規則等について、改正作業が完了する時期の見通しについてご回答下さい。

ア.年内
イ.1月
ウ.2月
エ.3月

→未定、だけれど選択肢がないので、きっと3月。

 

こんな感じで回答することになるかな。

「総点検・見直しを進めていく上で、課題等がありましたら自由に記述してください)」

という自由記述欄があるけれど、たぶん書かない。ほんとうは、

「うちはすでにトップダウン型のガバナンス体制で教授会は機能してないのに、今回の改正で逆に教授会を活性化する方策を考えないといけなくなり、結果的に今回のガバナンス改革は手続きだけが多くなってしまう可能性が高い」

と、書きたいなぁ。

学校教育法改正に伴う対応は

学校教育法の改正が行われ、来年4月から施行することになった。それにともない、各大学は内部の規定などを改正する法律に合わせる作業に追われている、はずですよね。

うちは私立大学ですから、そこだけの話でいうと、

 

・学長が最終決定権者であることを明らかな形にする

・学長の権限を副学長へ委任できるようになった

・学生の入学、卒業、学位の授与と、教育研究に関して重要な事項で教授会の意見を聞くことが必要な事項として学長が定めたもの、について、教授会が審議する

・学長の求めに応じ、教授会は意見を述べることができる。一方で教育研究に関する事項は審議できるし、学長に意見具申することはできる。

・退学や休学等は届出とし、速やかに受理する

 

おおざっぱにいうと、こんな感じかと思います。

教授会が強い大学は今、とても大変なようです。今まで教授会がすべて決定していたようなところは権限縮小になることから、規定の改定作業が難航しているところも多いと耳にします。でも、法律や施行規則、文科省からの通知、あるいは国会で議決されたときの付帯決議を読む限りでは、教授会の意向を学長はきちんと聞くようにと強く書かれているように見えます。実際、大学という組織はいくら学長や執行部が一方的に決めたとしても教員が従わなければ動かないところです。そこがふつうの営利企業と違うところで、まあそれがいいかどうかはコメントを控えますが、学長独裁の体制を整えたというよりも、責任体制を整えた改訂と言えるのではないかと思います。

つまり、何か問題があったら、最終的には学長が責任をとるんですよ、ということ。教授会は集合体ですから、責任の所在となるとあいまいになってしまう。

でも一方で、実は私の大学は教授会は形骸化しており、今回の学校教育法改正についても教職員は誰も関心を持っていません。もともと学長や理事長が強いんです。これもいいのか悪いのか困ったものです。

……と、他人事のように書いてきましたが、結果として今私の目の前に学校教育法改正に伴う対応の仕事がやってきました。

「えー、なんで私なんですか。こういうのは法務の人とか、教務とか、そういうところがやるんじゃないんですか」

上司は冷ややかに「みんなよくわかんないんだって。君はくわしそうだから、よろしく頼むよ」という。

くわしいのと、担当するのとはえらい違うんですよ。業務分掌ってことば、知ってますか?

という、私の言葉はむなしく響き、机の上には分厚い規程が載っている。

こうなったら、私の好きなように規定を造り変えてやるわ、という野望を抱きつつ、でもめんどくさいなぁと思うこのごろ。

実際、改正案を作ったら、いろんな教員や役職者にお伺いをたてないといけないし、法務担当の人とも調整しないといけないし、いくつもの会議にかけて説明しないといけないし、ああ、大学の企画業務って、外部の人が思うほど面白い仕事ではないのよね。

業界団体あたりで、規定改正の文例とか作ってくれないですかね。