研修がしたいの?
入試も結果も少しずつ明らかになっていますが、あんまり順調とはいえないですね。受験者数もそうだし、歩留まり率もそうだし、入試部署の部屋にお札を貼ろうということをいってる教員もいますが、どこの神社がよいのでしょうか。
さて、そんな喧騒を少し離れたところで心配そうに見ている私のところに、人事部の人が訪ねてきた。
「来年度のSDの計画で相談に乗ってほしいんですけど」
私が前職で研修を企画していたことを知っているからだろう。でもなんで今更きたのだろうか。
「SDを活性化したいと理事長から指示がありましたので」
なるほど、きっと何かの会合に出て、感化されたのだろうな。
「で、どんな研修を考えているんですか?」
「職員の能力がアップするようなものにしたいんです」
「能力って何?」
「えっ?」
「どういう能力をアップさせたいんです? 対象はどういう人たちなんですか」
「対象は……事務職員一般で、能力は、その、今よりもさらにアップさせたいというか」
「今は能力が足りないということですか?」
「足りないというか、今後のことを考えるとさらに能力をアップさせるというか」
「能力って何を想定していますか?」
「えっと、高等教育への理解とか、企画力とか、事務能力全般というか……」
「それって、人によって違うのではないですか?」
「そうかもしれないけれど、でも、全体的に能力をアップさせるというか」
「アップするとどうなるんです」
「アップしたら、、、業務が効率よくなったりとか、学生のサービス向上につながるとか、受験者が増えるとか」
「ということは、今は業務の効率が悪いとか、学生サービスの質が低いとか、受験生が集まっていないとか、それは事務職員の能力に問題があるということですか?」
「いえ、だから、今何か問題があるということではなくて、今後のことをかんがえて」
「今問題がないなら、改善する必要はないし、問題があるなら、その原因をつきとめた結果事務職員の能力に問題があるというのであれば対策を考えるという流がふつうではないですか」
「そ、そこまでではなくて、純粋に能力アップを目指すということなんで」
「そうしたら、まずは、どういった能力をアップさせるのか特定することから始めないといけないですね。そのうえで効果的な研修は何か考えていきましょう」
「そ、そうですね。また、相談させていただきます」
それっきり、人事部の人は私の前に現れません。あれ、何か変なこといったかしら、私。
研修が大切だ、大切だって声高に叫ばれている業界って、大学くらいだと思うんですが、そんなに能力が低い人ばかり集まっているのだろうか。うちやまわりの大学を見た限りでは業務は滞りなく動いているようだし、能力が足りないからといってクビになる人も聞いたことがない。(問題はないとはいわないけど、それは能力とは別の問題じゃないかなー)
SDと一言で言ってしまうけど、大学によって、あるいは部署や階層、経験年数によって必要な能力も研修も違うはずである。でも、SDと一言で言ってしまうと職員みんなに必要な研修みたいなことになってしまうから、私にはピンとこないのだろうか。
やっぱりSDといっている文科省に問題があるのか。それに踊らされる大学がいけないのだろうか。
そのうち、教育の質保証だけではなく、職員の質保証なんて話まででてくるかもしれない。いや、なんだかよくわからないSDなんてものをやるよりも、職員のジョブディスクリプションを作ったほうがよいのではないだろうか。
そうすると、現役の職員で困る人もでるのだろうか。
研修で何かが解決したり、組織能力が向上するなんて実際はあんまりないですよ。私の企業経験から見るかぎりですが。