大学の片隅で事務職員がさけぶ

小さな大学の事務職員がいろんなことをさけびます

都内への移転を考える

最近、東京23区内と郊外に複数のキャンパスをもつ大学が、都内に集約する動きが続いている。もちろんそれは、交通に便利な東京23区内のキャンパスに集約することで、受験者数を増やすことが大きな目的である。実際集約した大学のほとんどは、受験者数を増やしているようである。

ここには、いろいろな問題があるが、今回はある大学を例にキャンパス集約の意義を考えたい。

最近、都内のキャンパスへの集約を発表したのが、私立のT大学である。

文京区と千葉県にキャンパスがある3学部(1学部は募集停止)1研究科、学生数約2000名の小規模大学だ。収容定員充足率は2/3というところだろうか。附属校はなく、大学だけの法人組織となっている。2学部は設置2年目だが、やはり収容定員を割り込んでいる。

この大学が文京区のキャンパスに集約する旨を発表したが、他大学と違うのは、千葉のキャンパスをこれからの維持するということである。運動部の活動拠点やエクステンションセンターとして利用するのだという。

……この事例をSD研修のワークショップとかに使えるなと思うのです。財務指標などとともに、この大学の状況を分析して発表するのです。この大学の事例から私が読み取れることは以下のとおり。

1.文京区キャンパスの狭さ

ほぼビルだけ。ここに2000名……いや、もし収容定員を満たしたとしたら3000名近くの学生がビル一つに集約されることになる。それも新築や増築をすることなく、今のビル。工学院のような高層ビルでもない。一方で千葉のキャンパスを維持するということは、大学設置基準の校地面積と関係があるのか。

2.収容定員充足率の低さ

本来の収容定員は2800名ほどである。学納金の収入と赤字の関係はどうなっているのだろうか。

3.帰属収支の赤字が続く

ここ数年、帰属収支を大幅な赤字が続いている。2010年度の大学基準協会の認証評価結果でも、財務状況について勧告がついている。それ以降もいっこうに回復を見せず、事実上、たくわえを少しずつ食い尽くしているように見える。

4.教員の年齢

60代以上の教員が1/3を占めていて、これからどういう年齢構成になるのだろうか。彼らが定年退職となったときに変わりを太陽しないといけないが、一方で人件費抑制を考えると、おそらく設置基準上の最低限の人数に襲えることが考えられるが、それはいったい何人なのか。

……と、まあ、とりあえず、これだけのことが読み取れた。うちの業界は横のつながりが強いので、同業他社の状況を遡上にあれこれいうようなことは、おそらく難しいのだと思うが、そろそろ本当の現状に目を向けたほうがよいのではないかと思っている。架空の大学を想定した研修をすることが多いが、ほんとうのところ、同業他社はどうなっているのか、自分たちがどうなのかを見つめるべきなのではないか。

そんな私も自分の大学の財務状況なんかを分析して機会があると話題にしているのだが、うちの人たちってあんまり興味がないみたい。給与が下がったりしないと実感しないのか。今日は青学の教職員が給与を下げられたことについて訴訟を起こしたというニュースがあった。青学のような大きな大学ですら(本当に必要性があるかはわからないけど)給与にまで影響を与えるような経営だとしたら、自分たちのような小さな大学はどうなのか。今のところはうちは収容定員を満たしているので危機感がないのかなぁ。

 

 

 

内部規則等の総点検・見直し状況

文部科学省から内部規則等の総点検・見直し状況に関する進捗状況調査票が届いた。

ほんとうは違う部署に届いたんだけれど、廻り回って、気が付くと私の目の前に。

 

なんで私のところに、という問いに上司は

「君が全学の担当者だから」

えー、そんなの聞いてない。私は単純に案を考えるだけですよね、といったら、そうではなく、実施も含まれているというのだ。

知らない間に各部署との話し合いが行われて、そう決められてしまったらしい。

そんな面倒な仕事、マネージャーの仕事ですよね。でも、まかされたら仕方ない。調査票を眺めてみる。

 

質問は5つだけ(秘密じゃないから、書いてもいいよね?)

1.法律及び省令改正の内容や趣旨について、学内で十分に周知・理解されていますか。

→周知もされてないし、理解もされてない。教授会が実質的にないので、教員はみなさん無関心。関係の事務部署はこの話題を避けている。どうやって周知しよう。

2.総点検・見直しを行う学内の体制(実施責任者、担当部局、担当者の確定等)は整備されていますか。

→担当部局はうちの部署で担当者は私らしい。実施責任者は、誰になるのかな。

3.総点検・見直しを行うにあたって、設置者や学長から、作業に携わる者に対して、具体的な方向性や方針は示されていますか。

→具体的な方向性と方針の案を作ったので、あとは来週学長と理事長に了解をもらう。これで示された形になる、のかな。でも、2人も「よろしく」と上司に言っているみたいだからすでに示されているととらえてよいか。

4.内部規則の総点検作業の実施状況について、右記より最も近いものを選んで下さい。

ア.完了
イ.作業中
ウ.未着手

→作業中、になるのかな。

5.総点検作業の結果、見直しが必要な内部規則等について、改正作業が完了する時期の見通しについてご回答下さい。

ア.年内
イ.1月
ウ.2月
エ.3月

→未定、だけれど選択肢がないので、きっと3月。

 

こんな感じで回答することになるかな。

「総点検・見直しを進めていく上で、課題等がありましたら自由に記述してください)」

という自由記述欄があるけれど、たぶん書かない。ほんとうは、

「うちはすでにトップダウン型のガバナンス体制で教授会は機能してないのに、今回の改正で逆に教授会を活性化する方策を考えないといけなくなり、結果的に今回のガバナンス改革は手続きだけが多くなってしまう可能性が高い」

と、書きたいなぁ。

学校教育法改正に伴う対応は

学校教育法の改正が行われ、来年4月から施行することになった。それにともない、各大学は内部の規定などを改正する法律に合わせる作業に追われている、はずですよね。

うちは私立大学ですから、そこだけの話でいうと、

 

・学長が最終決定権者であることを明らかな形にする

・学長の権限を副学長へ委任できるようになった

・学生の入学、卒業、学位の授与と、教育研究に関して重要な事項で教授会の意見を聞くことが必要な事項として学長が定めたもの、について、教授会が審議する

・学長の求めに応じ、教授会は意見を述べることができる。一方で教育研究に関する事項は審議できるし、学長に意見具申することはできる。

・退学や休学等は届出とし、速やかに受理する

 

おおざっぱにいうと、こんな感じかと思います。

教授会が強い大学は今、とても大変なようです。今まで教授会がすべて決定していたようなところは権限縮小になることから、規定の改定作業が難航しているところも多いと耳にします。でも、法律や施行規則、文科省からの通知、あるいは国会で議決されたときの付帯決議を読む限りでは、教授会の意向を学長はきちんと聞くようにと強く書かれているように見えます。実際、大学という組織はいくら学長や執行部が一方的に決めたとしても教員が従わなければ動かないところです。そこがふつうの営利企業と違うところで、まあそれがいいかどうかはコメントを控えますが、学長独裁の体制を整えたというよりも、責任体制を整えた改訂と言えるのではないかと思います。

つまり、何か問題があったら、最終的には学長が責任をとるんですよ、ということ。教授会は集合体ですから、責任の所在となるとあいまいになってしまう。

でも一方で、実は私の大学は教授会は形骸化しており、今回の学校教育法改正についても教職員は誰も関心を持っていません。もともと学長や理事長が強いんです。これもいいのか悪いのか困ったものです。

……と、他人事のように書いてきましたが、結果として今私の目の前に学校教育法改正に伴う対応の仕事がやってきました。

「えー、なんで私なんですか。こういうのは法務の人とか、教務とか、そういうところがやるんじゃないんですか」

上司は冷ややかに「みんなよくわかんないんだって。君はくわしそうだから、よろしく頼むよ」という。

くわしいのと、担当するのとはえらい違うんですよ。業務分掌ってことば、知ってますか?

という、私の言葉はむなしく響き、机の上には分厚い規程が載っている。

こうなったら、私の好きなように規定を造り変えてやるわ、という野望を抱きつつ、でもめんどくさいなぁと思うこのごろ。

実際、改正案を作ったら、いろんな教員や役職者にお伺いをたてないといけないし、法務担当の人とも調整しないといけないし、いくつもの会議にかけて説明しないといけないし、ああ、大学の企画業務って、外部の人が思うほど面白い仕事ではないのよね。

業界団体あたりで、規定改正の文例とか作ってくれないですかね。

はじめに

私は小さな大学で事務職員をしています。

大学業界は変革の時を迎えているのですが、どうも全体的に動きがよくありません。いろいろな集まりに顔を出して他の大学の方とお話をしたり、様子を見ているのですが、危機感を共有している感じがしません。

いっぽうで、いろいろな方がブログを通じて、大学に関する情報発信をしています。大変役に立つお話も多い反面、遠くばかりをみて、まわりを見ていない話も多いように感じました。

仕事としては、教務や学生支援、教員支援、広報など一通り担当して今は企画っぽい部署にいます。

「言葉よりもその行動で」

というのが信条なので、本当であればブログで何か発信するよりも今の仕事で活かしていければよいのですが、やはり言いたいことを言えないこともあったり、大きな話すぎて私の立場では口にできないこともあるので、この際、ブログを作って発信してみることにしました。

不定期な更新になりますが、大学の片隅でさけぶ、というか、つぶやきたいと思います。

スタンスとしては、批判的思考でいきたいと思っています。私が学んだ大学院では批判的に見ることで改善するための問題提起になると教わったので、少し厳しめに書きたいと思っています。

あきっぽいのでどこまで続くがわかりませんが、たまに見ていただければと思います。