大学の片隅で事務職員がさけぶ

小さな大学の事務職員がいろんなことをさけびます

専門的職員とはこういうことか

明けましておめでとうございます。なかなかブログを更新することができません。忘れているわけではないのですが、公私ともにいろいろと忙しく、文章を書く気力がなかなか出ないんです。仕事で十分書いてますから。

 

さて、大学職員のHOTワードの一つに「専門的職員」というものがある。少し前は「高度専門職員」といわれていたものが、途中で表現が変わったものである。文部科学省が提唱しているものであるが、まだその定義がはっきりしておらず、中教審で継続審議のままである。このままだと来年度の大学設置基準への反映は難しいのではないだろうか。

大学教育部会で審議されたのは2015年の7月が最後のようだ。調査結果が出るまではペンディングなのだろうか。

大学における専門的職員の活用の実態把握に関する調査研究について:文部科学省

大学教育部会(第36回) 配付資料:文部科学省

 

専門的職員の必要性については、as-daigaku23さんが述べられている問題提起に賛成である。

as-daigaku23.hateblo.jp

大学は本当に専門的職員を求めているのか。その場合はどのような人を求めるのであろうか。

私は中途で採用された者であり、その能力が求められて採用されたはずである。だから今の企画系の部署にいるわけだが、将来的にずっとこの部署にいるのかはわからない。うちも含めて大学の事務組織の多くはジョブローテーションが行われており、まったく違う業務を行う部署に異動する可能性は高い。なぜなら「専門的職員」として採用されたのではなく「総合職」としての採用であり、何らかの理由があれば異動対象となるのだ。

もし私が異動で、今とはまったく違う学生支援や施設管理といった部署に移った時、私はどれだけ今の組織に貢献することができるだろうか。そして私の持っている経験や能力がどれだけ有効に使うことができるだろうか。

もちろん大学職員としては、特定の部署の業務だけではなくさまざまな部署を経験することは必要であろうし、一見関係ない業務でも役立つかもしれない。組織の中にいるものとして、自分の都合だけでどうにかできるものではないことはわかっている。

 

しかしである。私は自分が持っている経験や能力を活かすことを目的に転職してきたのである。それが使えないとなるとき私はどういう決断をするべきなのだろうか。

そういう意味で「専門的職員」というものに興味を持っていた。専門的職員であれば、異動などはないし、もしその大学で不要となった場合は違う大学へ容易に移ることができる仕組みになるのかという淡い想いを抱いたのだ。

 

それは、ある大学のIR業務担当者の職員公募を見て打ち砕かれたのです。

まずは応募資格。

(1) 大学または大学院を卒業し、Institutional Research(以下『IR』という)業務を遂行する能力を有していること。
(IR業務の遂行能力を有していれば、必ずしも大学院修了にはこだわらない)
(2) MicrosoftExcelを使いこなせること。また、SPSS等のソフトウェアを用いた統計分析の経験があること。
(3) 大学の教学に関する知識を有していること。

ハードルは少し高いけれど、これはいいですよね。

主な職務。

(1) ●●大学の事業企画に資する情報の選定およびその収集分析(高等教育を取り巻く外部環境の分析含む)

(2) ●●大学および各部局の教育の質向上に資する情報の収集分析

(3) ●●大学および各部局の自己点検・評価に資する情報の収集分析

(4) その他、●●大学Institutional Research企画運営委員会および総長室付大学評価室(IR担当)が必要と認める業務

※ 教育研究職ではありません。

かなり高度な仕事ですね。

問題は待遇です。

契約期間:2016年4月1日~2017年3月31日(1年)

※ 大学と本人双方の合意があった場合、上記契約終了後に1年契約を4回まで更新可能。ただし、契約期間中に満65歳を迎える場合は、当該契約期間終了以後は更新不可。

※ 本学スタッフとしてふさわしくないと大学が判断した場合は、契約期間中であっても契約を解除することがあります。

まずは専門嘱託職員(有期雇用職員)であるということ。当然契約更新は最長5年。正規の職員や教員への採用、身分転換はありませんと書いてありました。

そして給与。 

本俸:月額250,000円

賞与:年2回(夏期・冬期)それぞれ本俸1か月分但し、初年度の夏期賞与は

未就任控除あり

つまり、新卒の大学職員よりも年収が少ない状態で、これだけ高度な業務を担当し、でも最長で5年が過ぎたらさよなら、ということである。

 

ここまで長々と書いてきたが、ようするに専門的職員という制度が導入された場合、専任教員のように雇用の流動化が生まれる反面、高度な業務にもかかわらず専任職員よりも低い雇用条件で公募される可能性は高いのか、ということである。たしかに職員の公募で特定の仕事を求めているものはだいたい嘱託などの有期契約で給与は専任に比べると極端に低いものがほとんどだ。専門的職員というものが制度化されたとしても、行きつく先は見えているということだろうか。

現在でも、特任教員という形で高度な業務を求めつつ、待遇は専任教員よりも低く雇用するという状況がある。同じことになるのだろうか。

 

この前、ほかの大学の人事部長とお話をする機会があった。異動せずに長年同じ部署にいる人は、その人がいなくなると仕事がまわらなくなるため異動させられない場合と、他に引き取り手がなく異動させられない場合の二通りがあるという話を聞いた。うちの状況を見ると…………さて、私はどっちだろうか。

 

私の引き取り手がないような気がしてきた。