大学の片隅で事務職員がさけぶ

小さな大学の事務職員がいろんなことをさけびます

学費無料の原資は

どの大学も夏休みですが、オープンキャンパスの時期でもあり、集客に一喜一憂しているのでしょうか。うちは、担当者が真っ青です……。

 

そういえば、大学院の博士課程で学費を無料する大学が現れた、という記事がありました。

博士課程の学費、全員「タダ」 東京理科大が来年度から:朝日新聞デジタル

 

博士課程と書いてあるけれど、博士後期課程のことかな。「初年度の入学金30万円のほか、施設設備費18万円と授業料約80万円が毎年必要で、3年間で計約320万円かかる。来年度からは入学金と施設設備費を免除し、授業料相当額を返済不要の奨学金として給付する予定」だそうな。それも全員。なおかつ来年度入学者から、だけではなく在学生も対象になるという。

このほかに経済的支援として「博士課程の学生のうち3割程度を「リサーチアシスタント」として大学が雇い、年105万円を払う。また、「テニュアトラック制度」を設けて、若手研究者を年3人程度試しに雇い、初年度に1千万円の研究資金を提供する。一定の研究成果を残せば准教授などの正職員に採用する」ということらしい。

どれだけ学生がいるのかと思ったら「現在約280人の博士課程の学生を、将来的に500人程度まで増やしたい考えだ。5年で約40億円の支出増を見込む」とあった。

 

数名しか学生がいないような大学院ならともかく、博士後期課程で280名もいるような大学でそういうことをするんだ……と感心した。数名しかいないような大学院でしたら、効果があると思うんですよ。いや、280名もいる大学院でも効果はあるでしょう。でもそれにかかる金額が違う。5年で40億円ですよ。

 

この原資は何?

 

これは東京理科大学だけではなく、多くの大学で実施している給付型の奨学金にもいえる話だ。何かの基金があって、その運用益ないし切り崩しによる給付ならいいと思うんです。あるいはスポンサーを見つけてそこからお金をださせる方法もあるでしょう。

 

でも、そうでなければ原資は何かといえば、学生が払っている学費なんですよ。

 

学費なんですよ。

 

いわば、キャッシュバックですよね。

 

成績優秀者にはキャッシュバックしますよ、的な奨学金はまあいいと思いますよ。全員に機会があるわけですから。あとは努力次第。

 

でも、博士後期課程とはいえ、全員というのはどうなんだろうか。それもキャッシュバックどころか、最初からお金を払ってないのだ。

 

ステークホルダーたる他の学生は納得するのだろうか。それとも、無料にすることで学部・修士課程の学生に有益なことがあるのだろうか。

今、東京理科大学のサイトを見ましたけれど、この報道に関することは何も載ってませんでした。

 

私は今の職場で無茶な支出が行われようとすると、だいたい「これって学生の学費ですよね」といいます。だいたい嫌な顔をされます。一般的に大学の収入の7割~8割は学生の学費です。大学で働く者として、それは忘れてはいけないことだと思うのです。

 

東京理科大学の今回の施策は、博士後期課程の活性化、優秀な研究者の確保と育成という視点で言えば、すばらしいと思います。数名しか在学者がいないようなほかの大学の大学院も検討してもいいのではないかとも思っています。

でも、こういう施策を実施する場合は、どの大学においてもその原資のことも意識してほしいし、その有益性について学内外に向けて積極的に発信する必要があるのではないか、と今回の報道で感じました。