大学の片隅で事務職員がさけぶ

小さな大学の事務職員がいろんなことをさけびます

大学案内の目的は

ほぼすべての大学で「大学案内」の冊子を作っているだろう。東洋大学は今年からWebのみにしたようだが、印刷物とweb版の双方を作っているところが多くなっているような気がする。

その中で、近畿大学がファッション誌のような案内を作ったとニュースになった。

これが「大学案内」とは まるでファッション誌「近畿大学案内」 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

 

ところで、大学案内のターゲットは誰なのだろうか。もちろん受験生であろう。

 

では、目的は何か。

それは大学によっておそらく違うのではないかと思われる。受験生への情報提供かもしれないし、受験生よりも親や高校への情報提供かもしれない。あるいは、大学として案内くらいはないと、という程度の意識かもしれない。

というのも、最近の受験生は大学案内をどれだけ進路決定の材料にするのかが疑問である。受験戦争などといわれたころは、偏差値で受験先を選ぶしかなかった。入試の時にはじめて大学に行った、という人も多いようだ。

でも、今は違う。偏差値上位の大学でなければ、選択肢はいくらでもある状態となっている。ネットの情報、親や教師の意見、オープンキャンパスなどによる見学、学内進学相談会でのプレゼン……そういったアプローチの中で進路先をイメージし、決めていく。その中に大学案内というものもあるが、最近の高校生は文字を読まないといわれている。だから、多くの大学の案内もビジュアル重視で、カリキュラムなど細かい情報は小さく掲載するか、ホームページで見るようになっている。

消費者行動論的な考え方でいけば、大学案内はどれだけ有効なのだろうか。

サミュエル・ローランド・ホールが提唱した「AIDMA」は、消費者が購入するまでのプロセスを「Attention(注意)「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の5つに整理したものだ。

この理論でいえば大学案内はどこにあてはまるのか。大学案内は基本的に資料請求に基づき送る場合が多いとすれば、「Interest(関心)」を持った人が請求するということになるだろう。しかし、そこから「Desire(欲求)」に結びつくだろうか。

電通が提唱したAISASでは、AIDMAにあった「Desire」と「Memory」を「Search(検索)」に置き換え、「Action」の後に「Shere(共有)」を追加したものである。

 

そう、今は関心があればネットで調べるわけである。

 

そう考えると、大学案内は消費者行動論的な考え方、すなわち、大学を選び志願するという過程においては、実は、もはや不要な存在なのではないだろうか。東洋大学が大学案内を廃止したのはおそらくそういう考え方だろう。

一方で近畿大学は受験生は大学案内を読まない、という視点から大学に興味を惹かせるための方策としてファッション誌のようなつくりに変えたのだろう。

 

そういう意味では、東洋大学近畿大学も広報戦略をしっかりと立案し、ターゲットを見極めて差別化戦略をとっているといえるのではないだろうか。

 

ここから学ぶべきことはほかの大学でもあるだろう。大学案内に多額の資金を投入するよりも、受験生の消費者行動を分析し、効果的な広報戦略を立てる必要があるのではないか。予算は限られているのだから。

 

うちは……うーん。