大学の片隅で事務職員がさけぶ

小さな大学の事務職員がいろんなことをさけびます

大学進学という投資効果

 文部科学省の学校基本調査(速報値)によると、2014年度の高校卒業者の大学・短大進学率は53.9%、大学だけでいうと48.1%だった。専門学校への進学率が17.0%だとすると、進学者は70.9%。国際的にみると、これでも先進国と比べると低い。

第43回 減少する大学進学率 52.2%(2010)→50.8%(2013)〜学位に依存しない社会の到来?〜 | 日本生命保険相互会社

まだ日本の大学進学率は向上する可能性がある、と考える人は、奨学金や大学への補助を高めることを求めている。そうすれば、危惧されている2018年問題による大学経営の危機も回避できる、と考えらしい。 

しかし、そうなのだろうか。

最近、こんなニュースがあった。

奨学金返せず自己破産、40歳フリーター 月収14万円「283万円払えない」 (qBiz 西日本新聞経済電子版) - Yahoo!ニュース

内容が消えてしまうかもしれないので、簡単に書いておくと、日本学生支援機構から高校、大学で無利子の奨学金を借りた奨学金を返還できないとして、北九州市小倉北区フリーターの男性(40)が自己破産。延滞金を含めて約283万円の返還義務が残っていたが、ほとんど返済できず、返還を求めて機構が提訴し全額の支払いが命じられていた。大学卒業後就職できず、アルバイトで生計を立てる生活で、返還期間の猶予も受けたが返せなかったという。収入は月に14万円で家賃や光熱費、家族の仕送りまでしていて、生活費は2万円だったそうだ。

このニュースを読んで大学業界の人はどう思っただろうか。だから給付型の奨学金制度の充実が必要だと思っただろうか。実際にそういう議論をしたり、問題提起をされている人もいる。

 

しかし、このニュースの本質はそうではなく、「大卒」という資格への投資価値ではないかと思う。

このフリーターはもし大学に進学せず、正社員として、いやフリーターとしてアルバイト生活を続けていたらどうなっただろう。高校の時の奨学金は返さないといけないけれど、大学の奨学金という借金も、支払った学費や教科書代なども使わずには済んだはずだから、違う人生であったのではないだろうか。大卒という資格を持っていても、結局は何も役に立たなかった、という事例ではないかと私は思う。

新卒で就職できなかった人は苦労するといわれる。中途採用で正社員としての経験がない大卒は基本的に書類選考で落としているという話を聞いたことがある。

 結局大学進学という価値は、「大学卒業見込み」でいっせいにスタートする就職活動にエントリーできるだけのものなのだろうか。それはかなり投機性の高い投資だ。

一方で私も経験した中途採用では、基本的に学歴(どの大学をでたかも含めて)よりも経験を重視される場合が多いようにみえる。大学事務職員の採用ですら、大学でどんな専攻だったか、どんな論文を書いたのかなどという話題はほとんどない。大学ですら、ほんとは大学で学ぶということを信用してないのではないだろうか。

そんな大卒という資格に400万円以上も投資する価値があるのか。社会人の受け入れを進めようという動きもあるが、なおさら投資価値を考えないといけない。価値のないものにまっとうな社会人は投資しようとはけっしてしないだろう。

 

大学は受験生や社会に対して、400万円以上もかけても学ぶ価値があることをどうやって見せることができるだろうか。これが、今後生き残り競争が激化する大学業界において重要なテーマになるのではないかと私は考えている。

 

さて、自分で振り返ってみて、400万円以上も投資した結果はどうだっただろうか。それ以上のリターンがあったか、あるいはこれからあるのか、これから計算してみよう(どうやって?)。